相続が始まると「亡くなった家族が不動産を持っていたか」が分からず手続きが止まることがあります。不動産を把握できないまま進めると、固定資産税の未納や相続税申告の漏れ、売却・管理の方針が立てられないなどの不利益につながりかねません。

 

ここでは、不動産を漏れなく調べる実務手順をまとめます。山林・農地など見落としやすい不動産にも注意しましょう。

 

被相続人の不動産を調べる理由

不動産の把握は、遺産分割・相続登記・税務対応の前提になります。

 

不動産は預貯金と違い、所在や名義が分からないと調査に時間がかかり、遺産分割協議や名義変更が進みません。把握が遅れると、固定資産税の支払いが滞ったり、相続税申告に漏れが出たりする可能性もあります。まずは「どこに・何を・どれだけ」持っていたかを特定することが重要です。

 

固定資産税の納付通知書で確認する

毎年届く書類は、所有不動産の手掛かりになります。

 

固定資産税は、毎年11日時点の所有者に課税されます。被相続人が不動産を所有していれば、原則として市区町村から納付通知書が届いています。自宅の書類・通帳周り・保管箱などを確認し、納付通知書や課税明細書が見つかれば、不動産を所有していた可能性が高いと判断できるでしょう。

 

納付通知書が見つからないとき

書類がないからといって「不動産なし」とは限りません。次のような理由で、納付通知書が手元にないことがあります。

 

  • 共有不動産で、通知書が他の共有者宛てに送付されている
  • 引越し・転送漏れ・保管場所が別で見つからない
  • 滞納や整理の過程で書類が散逸している
  • 免税点以下で課税自体がなく、通知書が発行されない土地がある

 

納付通知書は有力な手掛かりですが、これだけで判断せず次の方法も併用しましょう。

 

登記資料や権利証などで把握する

登記関連書類が見つかれば、所在地や地番などを特定できます。

 

家の整理中に、権利証(登記済証)や登記識別情報通知書、売買契約書、固定資産税評価資料などが出てくることがありますが、これらには、不動産の所在地・地番・家屋番号など、登記簿を取るために重要な情報が記載されています。

 

見つかったものはコピーを取って保管し、後の相続登記や売却検討に備えましょう。

 

書類がなくても調査は可能

手元資料がなくても、役所や登記情報から不動産の所在を特定することは可能です。

 

この場合、名寄帳や登記簿の情報から不動産を特定することになります。ただし、所在地情報が曖昧だと調査に時間がかかりやすいため、早めの着手が大切です。

 

名寄帳で不動産をまとめて確認する

名寄帳(なよせちょう)は、市区町村が管理する固定資産課税台帳を名義人ごとにまとめた一覧です。被相続人名義の土地・建物が一括で表示されるため、宅地だけでなく山林や農地も含めて把握しやすいのが特徴です。

 

名寄帳を取れる人と主な持ち物

相続人であることを示して請求するのが一般的です。自治体により運用は異なりますが、一般的には次の準備が求められます。

 

  • 請求者の本人確認書類(運転免許証など)
  • 被相続人の死亡が分かる戸籍等
  • 相続人であることが分かる戸籍等
  • (代理の場合)委任状等

 

請求窓口は資産税担当部署になることが多いため、事前に自治体の案内を確認するとスムーズです。

 

名寄帳で分かること

相続の初動で必要な情報を効率よく集められます。

 

  • 市区町村内にある土地・建物の一覧
  • 地目(宅地・畑・山林など)や所在地の手掛かり
  • 評価額(税金・分割の検討材料)
  • 共有の可能性がある物件の手掛かり

 

ただし、名寄帳は市区町村単位のため、複数の自治体に不動産がある可能性がある場合は、該当しそうな自治体ごとに請求します。

 

【令和8年2月施行】所有不動産記録証明制度で確認する

令和8年2月に施行された「所有不動産記録証明制度」は、登記情報にもとづいて特定の個人が所有する不動産を一覧形式で証明する制度です。これにより、従来は個別に調査する必要があった不動産の所在を一括して確認できるようになりました。同制度の開始により、相続手続における不動産調査の負担軽減と相続登記の促進が期待されています。

所有不動産記録証明制度の手続の流れ

所有不動産記録証明制度を利用するには、申請から証明書取得まで一定の手順に沿って手続きする必要があります。

① 相続関係の確認と必要書類の準備

申請前に、被相続人と申請者との関係を証明する書類を準備する必要があります。相続人であることが確認できなければ申請できません

一般的には、被相続人の死亡の事実が分かる戸籍や申請者が相続人であることを示す戸籍関係書類などを用意します。これにより、利害関係人として申請資格があることを証明します。

② 申請書の作成

法務局に提出するための所定の申請書を作成します。対象となる被相続人の氏名や住所などを正確に記載することが求められます。記載内容に誤りがあると、正確な不動産情報が取得できない可能性があるため、住民票や戸籍の記載を確認しながら慎重に作成しなければなりません。

③ 法務局への申請

準備した書類一式を添えて法務局へ申請を行います。申請は窓口のほか郵送で行うことも可能です。

申請時には、本人確認書類の提示や提出が必要となるほか、手数料の納付も求められます。申請内容に不備がある場合は補正を求められることがあります。

④ 所有不動産記録証明書の交付

申請が受理されると、登記記録に基づき被相続人名義の不動産が一覧化された証明書が交付されます。この証明書には、対象者が所有する土地や建物の情報が記載されており、不動産調査の出発点として活用できます。

⑤ 証明書をもとに詳細調査を実施

取得した証明書をもとに、個別の不動産について詳細確認を行います。登記事項証明書を取得して、それぞれの不動産の持分や権利関係を正確に把握しましょう。また、必要に応じて名寄帳などの資料と照合し、漏れや不一致がないか確認することが重要です。

⑥ 相続手続(遺産分割・相続登記)へ進む

不動産の全体像を把握した後、遺産分割協議相続登記などの具体的な手続に進みます。不動産の調査結果は、その後の相続手続の基礎となるため、正確性を確保したうえで進めることが重要です。

実務上の注意

所有不動産記録証明制度は非常に有効な制度ですが、登記されていない不動産や名義が異なる不動産は対象外となる可能性があります。そのため、名寄帳や現地調査などを併用しながら調査を進めていくのが対応として適切だといえるでしょう。

山林・農地など見落としやすい不動産に注意

山林や農地は評価額が低く、固定資産税が免税点以下となることもあります。その場合、納付通知書が届かず「不動産はない」と誤認されがちです。名寄帳で把握しておくと、相続税申告や管理方針の検討での漏れを減らせます。

 

山林・農地は処分や管理が難しいことがある

山林・農地は、境界不明や接道状況などで売却が難しいケースがあります。管理負担や将来の活用可能性も含め、相続人間で早めに情報共有しておくとトラブルを避けやすくなるでしょう。

 

相続登記・遺産分割をスムーズに進めるコツ

不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)を進める必要があります。遺産分割協議前にすべての財産を明らかにしなければなりませんので、不動産の有無、またどのような不動産があるかを確定しておくことが大事です。

 

共有不動産がある場合の注意点

共有名義の場合、通知が他の共有者に届いていたり、共有者の同意がないと売却等が進まなかったりします。名寄帳と登記簿の情報を突き合わせ、共有者の範囲や連絡先の確認を早めに行いましょう。

 

まとめ

不動産の調査を丁寧に行うほど、遺産分割・相続登記・税務対応がスムーズになります。見落としやすい山林・農地、共有不動産の有無まで含めて早めに整理し、状況に応じて専門家の支援も活用しながら、無理のない相続手続きを進めましょう。

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