相続手続きを進めるうえで、最初に直面する大きなハードルが「戸籍の収集」です。被相続人の出生から死亡までの戸籍や、相続人全員の戸籍を揃える作業は、時間も手間もかかる工程でした。
こうした負担を軽減するため、令和6年(2024年)に改正戸籍法が施行されました。本記事では、改正内容と相続実務への影響を整理し、どのように手続きが変わったのかを解説します。
改正戸籍法とは
改正戸籍法は、戸籍情報の電子化と広域利用を進めることで、戸籍に関する各種手続きを効率化するために施行された法改正です。
従来は、本籍地の市区町村でしか戸籍謄本等を取得できないケースが多く、相続の初期段階で大きな負担となっていました。改正により、戸籍の取得方法や提出手続きが大きく見直されています。
改正戸籍法の主なポイント
改正により、次のような利便性向上が図られました。
① 本籍地以外での戸籍取得が可能に(広域交付制度)
最も大きな変更点が、戸籍謄本の「広域交付制度」です。これにより、本人が市区町村の窓口に出向けば、本籍地以外の自治体の戸籍謄本も請求できるようになりました。
【相続手続きへの影響】
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍を一括取得しやすい
- 相続人の戸籍もまとめて取得可能
- 郵送請求の回数を減らせる
相続初期作業の効率が大きく向上しました。
② 行政手続きで戸籍提出を省略できる場面の拡大
戸籍情報が電子的に管理されるようになったことで、行政機関が内部で戸籍情報を確認できるケースが増えました。その結果、戸籍謄本の提出を省略できる手続きが拡大しています。
例
- 児童扶養手当関連手続き
- 年金関連手続き
- 健康保険の被扶養者認定
- 奨学金返還免除申請
ただし、すべての場面で不要になるわけではなく、ケースによっては提出を求められることがあります。
③ 戸籍届出時の添付書類の簡素化
婚姻届や転籍届などの戸籍届出においても、戸籍謄抄本の提出が不要となる場合が拡大しました。これにより、ライフイベントに関わる行政手続き全体の負担も軽減されています。
相続実務における広域交付制度の注意点
広域交付制度は便利な仕組みですが、いくつかの制限があります。
本人請求のみが対象
広域交付制度を利用できるのは、原則として本人が窓口で請求する場合です。
行政書士などの専門家による代理請求は、広域交付の対象とはなりません。
取得できる戸籍の範囲に制限あり
広域交付では、直系尊属(親など)・直系卑属(子など)の戸籍取得は可能ですが、兄弟姉妹や叔父・叔母などの戸籍は対象外となる場合があります。
そのため、代襲相続や複雑な相続関係がある場合は、従来どおりの方法での収集が必要になることがあります。
戸籍収集だけでは相続は終わらない
改正戸籍法により戸籍収集は便利になりましたが、相続手続きは戸籍収集だけで完結するものではありません。相続には、次のような手続きが含まれます。
- 相続人の確定
- 遺言書の有無の確認
- 遺産分割協議
- 不動産の相続登記
- 預貯金の名義変更
- 相続税申告
戸籍収集が簡略化されたとしても、手続き全体の複雑さは変わりません。
まとめ
令和6年(2024年)施行の改正戸籍法により、戸籍の広域交付制度が始まり、相続手続きの初期段階における負担は大きく軽減されました。
特に、
- 遠方本籍の戸籍取得が容易に
- 郵送請求の手間削減
- 行政手続きの簡素化
といった点で実務上のメリットは大きいといえます。
しかし、相続は戸籍収集だけで完結するものではありません。遺産分割や税務、不動産登記など複数の法律分野が関わります。手続きに不安がある場合は、専門家の助言を受けながら、漏れのない対応を行うことが円滑な相続につながります。









