相続では、相続人全員の合意による遺産分割が原則ですが、認知症などにより判断能力が低下している場合、法的に有効な手続きができないことがあります。このようなケースでは、適切な制度を利用することが重要です。

 

認知症の親が相続人に含まれる場合の問題点

認知症の親が相続人である場合、そのままでは遺産分割協議に参加できず、合意自体が無効となるおそれがあります。このような事態を避けるためにも、適切な代理人の関与が必要となるでしょう。

 

成年後見制度の活用

成年後見制度とは、判断能力が不十分な人の財産や権利を保護するために、家庭裁判所が後見人を選任する仕組みです。

 

成年後見制度を利用すると、家庭裁判所により選任された成年後見人が、認知症の親に代わって法律行為や財産管理を行うことができます。これにより、遺産分割や名義変更などの手続きを進めることが可能になるのです。

 

成年後見人の主な役割

成年後見人は、被後見人の利益を守るために幅広い業務を担います。

 

財産の調査・管理

預貯金や不動産などの状況を把握し、適切に管理します。

 

法律行為の代理

遺産分割協議や不動産の名義変更などを代理で行います。

 

家庭裁判所への報告

財産の収支や管理状況について定期的に報告義務があります。

 

成年後見人選任の手続き

申立てには診断書や財産目録などが必要であり、裁判所が適切な人物を選任します。後見人は親族のほか、弁護士や司法書士などの専門職が選ばれる場合もあります。

 

制度見直しの動向

近年では、より柔軟な制度運用を目指す見直しが検討されており、利用しやすさの向上が議論されています。

 

令和7年法制審議会が行われ、成年後見制度に関する改正要綱案が取りまとめられました。改正要綱案では、「補助」類型を中心とした、より柔軟で自由度の高い成年後見制度の実現を目指すことになりそうです。

※関連記事はこちら

成年後見制度の見直しとは?令和7年の中間試案と法改正の方向

 

特別代理人の選任が必要なケース

後見人と本人の間で利害が対立する場合には、別途特別代理人の選任が必要となります。

 

例えば、成年後見人自身が相続人である場合、遺産分割において利益が衝突するおそれがあります。このような場合には、家庭裁判所が特別代理人を選任し、公平な手続きを確保する必要があるのです。

 

特別代理人の役割

特別代理人は、特定の手続きにおいて本人の利益を守る役割を担います。

 

遺産分割協議への参加

本人の代わりに協議に参加し、適正な内容を確保します。

 

各種契約・手続きの代理

名義変更や相続関連手続きを適切に進めます。

 

親が元気なうちにできる相続対策

認知症発症後は手続きが複雑になるため、事前の準備が重要となります。

 

早期の対策実施

認知症の兆候が見られる段階(まだ判断能力を失っていない状態)であれば、成年後見制度や遺言作成を検討しておくことが大切です。

 

適切な代理人候補の選定

後見人や特別代理人となる人物は、信頼性や中立性を踏まえて慎重に選ぶ必要があります。

 

遺産分割に備えた準備

将来の手続きを見据え、財産の整理や分割方針の検討を進めておくことが有効です。

 

名義変更手続きの確認

不動産や預貯金の名義変更は代理人による手続きとなるため、事前に流れを把握しておくと安心です。

 

まとめ

認知症の親が相続人に含まれる場合、成年後見制度の利用により手続きを進めることが基本路線ですが、後見人と相続人が重なる場合は特別代理人の選任が必要となるなど、対応は複雑になります。

 

相続と成年後見は専門的な判断が求められる分野であり、手続きの進め方は決して容易なものではありません。できるだけ相続の経験豊かな専門家に相談し、状況に応じた適切な対応を進めることをおすすめします。

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