配偶者の一方が亡くなった場合、残された配偶者がそのまま自宅に住み続けられるのかは重要な問題です。相続により所有者が変わった場合でも、一定の条件を満たせば居住を継続できる制度が設けられています。

 

配偶者居住権とは

配偶者居住権とは、相続開始後も被相続人の配偶者が無償で住居に居住し続けることができる権利です。民法改正により導入され、被相続人の所有する建物を他の相続人が取得した場合でも、配偶者は退去せず生活を継続できます。

 

適用される主な要件

制度を利用するには、一定の条件を満たす必要があります。

 

被相続人が所有していた建物であること

単独または配偶者との共有であった住居が対象となります。

 

相続開始時に配偶者が居住していること

実際に生活の本拠として使用している必要があります。

 

制度施行後の相続であること

制度は令和241日以降に開始した相続に適用されます。

 

配偶者居住権を成立させる手続き

配偶者居住権は、自動的に発生するものではなく、一定の手続きを経て成立します。

 

遺言による設定

被相続人が遺言で配偶者居住権を設定する旨を記載している場合に成立します。

 

遺産分割協議による取得

相続人の間で合意に達することにより、配偶者が居住権を取得することが可能です。

 

家庭裁判所の審判

協議が整わない場合には、家庭裁判所の判断により設定されることがあります。

 

短期居住権と配偶者居住権の違い

短期居住権は、相続直後の一定期間に限り、配偶者が無償で居住できる権利です。長期的な居住を保障する配偶者居住権とは一線を画しています。

 

短期居住権の特徴

短期居住権には、長期的な居住を約束する配偶者居住権とは異なる特徴があります。

 

一定期間のみ居住可能

遺産分割終了まで、または死亡後6か月など一定期間に限られます。

 

登記ができない

第三者に対して権利を主張することができない点に注意が必要です。

 

配偶者居住権の特徴

配偶者居住権の特徴もおさらいしていきましょう。

 

原則として長期間の居住が可能

配偶者の生活基盤を長期的に保護します。

 

登記により第三者に対抗可能

適切に登記することで権利を保全できます。

 

配偶者居住権と相続分の関係

配偶者居住権は、遺産分割の内容や取得割合にも影響を与える制度です。

 

通常、特定の財産を取得するとその分相続分が調整されますが、一定の条件下では配偶者に有利な取扱いが認められています。

 

たとえば「長期間婚姻している配偶者への配慮」として、一定の要件を満たす場合は居住権の取得が相続分に影響しにくい仕組みがあります。この制度により、住居を維持しながら他の財産も取得しやすくなります。

 

登記の重要性

配偶者居住権を取得した場合は、建物について設定登記を行うことが重要です。登記をしなかった場合、建物の所有者が第三者に売却した際に権利を主張できない可能性があります。

 

所有者と共同で申請が必要

登記は原則として権利者と所有者が共同で行います。

 

登記の優先関係に注意

登記の順序により、権利関係の優劣が決まる場合があります。

 

配偶者居住権の制限と注意点

居住権には一定の制約があり、自由に処分できる権利ではありません。

 

譲渡はできない

配偶者居住権は本人固有の権利であり、第三者に譲渡することはできません。

 

賃貸には所有者の同意が必要

住居を第三者に貸し出す場合には、建物所有者の承諾が必要です。

 

維持費の負担

固定資産税や修繕費など、建物の維持に必要な費用は配偶者が負担するのが原則です。

 

増改築の制限

建物の改修や増築を行う場合には、所有者の同意が求められます。

 

まとめ

配偶者居住権は、相続によって自宅の所有者が変わった場合でも、配偶者が住み慣れた住居で生活を続けられるようにする重要な制度です。

 

一方で、成立方法や登記、他の相続人との関係など、専門的な判断が必要となる場面も多くあります。制度の活用を検討する際は、専門家に相談し、状況に応じた最適な手続きを進めることをおすすめします。

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